Kiss in the dark リンク記念
文 Enne様
イラスト g-than様
或る日人間の姿で響子を訪ねた絵理花は、今日も今日とて
世界を揺るがす大事件に遭遇する羽目に陥るのであった
「いらっしゃい絵理花さん、姉さんも来てるのよ」
「そうなの?」
「ええ、じゃわたしちょっと着替えてくるから、姉さんとお話しててね?」
絵理花がリビングに上がるとなんと紘子は漆黒の重ねをまとって端座しているではないか
「おお、わが結社の誇る戦闘生物『フィーメルスパイダー』よ良くきた」
「ちょ、ちょっと紘子さん、その格好どうしたって言うんです」
「軽々しく言うでない、我は秘密結社『紘宮社』の首領『斎王』なるぞ」
「だから、紘宮社って神社の名前でしょ?」
「何を言う。今日から我が結社の名前とそう決めた」
「もう、なにわけわかんない事言って、響子さーん、紘子さんおかしいよぉ」
「昨日からね、姉さんのりのりなのよ」
とリビングに帰ってきた響子の姿は…
「きょきょ、響子さんまで!」
響子のまとうその衣裳は襟が立った深紅のオールインワン、
そして同色のガントレットとロングブーツ
まるでどこかの男性誌から抜け出してきたような姿だが長身の響子には恐ろしいほど良く似合う
「い、一体全体、二人して…って響子さんその手に持ってるのって?」
「あ、これ?姉さんがどうしても持ちなさいって」
響子はにっこり微笑むと手にしたムチをびしりっと空で鳴らしてみせる
「うふ、姉さんnetでK.I.Dってページ見て凝っちゃったみたいなのよ〜」
「なに、なにそのK.I.Dって??」
「ほら、これよ」
K.I.Dなるページを閲覧した絵理花ががっくり脱力して背後の二人を振り返るが
二人は互いの衣裳をもっとこうしたほうがなどと言い合っている
「で、紘子さんはまぁあんな人だからわかるけど…響子さん?」
「え”」
「響子さん目が泳いでる…さてはなんだかんだ言ってのりのりでしょ?」
「お、おほほ、き、気のせいよ、いつも目立たない格好だからって事なんか…」
「どうどう?絵理花さん私って首領が務まりそうでしょ?」
私が主役よとばかり紘子が話に入ってくる
「務まるってか、大抵の悪の首領さんは逃げますよ」
「あはは、姉さんならそうかもね」
「響子さんだってのりのりじゃないですか?何です悪の女幹部?」
「そうなの、こういう生き方もいいかなぁって?」
「フィーメル、我らの大義のため世界をこの手にしようではないか」
やばい、このまま紘子を野放しにすると、世界が危ないのはどうでも良いが
苦労をするのはわたしだけって事になりそうな気が…いやきっとそれに違いない
「で、でも悪の組織ごっこするにはメンバー少なすぎ!」
ともかく状況を打開しないと!絵理花は必死の抵抗を試みる
「えっとねあてはあるのよ〜瞳さんと蒼さんに声掛けちゃおうって〜」
「戦闘員なら遥さんと望さんがいるわね」
『ひ、瞳さんまで、いやますます使い走りが自分だけって事に』
絵理花の背中を冷や汗がたらたらと流れ落ちる
しかし楽しげな悪の幹部姉妹を眺めるうちに絵理花の脳裏に1つの回答がひらめいた
「え〜っと紘子さんも響子さんも二人とも私の愛人さんですよね?」
「一応そうよ」
「私は勿論そうね」
「だったらこれは命令です!止・め・て・ね?恥ずかしいから!」
「え〜〜〜〜、詰まんない〜」
「あら、そうなの?」
絵理花はここはもう強気で行くしかないと覚悟を決める、どうせ苦労をするのなら
せめて恥ずかしい格好の愛人を抱えなくって済むだけましではないか
「駄目ったらダメったら駄目!」
こうして改造人間フィーメルスパイダーの活躍で
密かに恐怖の悪の組織「紘宮社」は活動前に壊滅させられたのだった
戦えフィーメル人類の自由の為に!
(でもあなたの自由は遠いわね?)